退職勧奨とは

退職勧奨は、使用者である会社側から従業員である労働者に対して退職を促す行為のことです。

退職勧奨は、
「希望退職者を募るなど全従業員やあるカテゴリーの従業員に対して行われる場合」と、「個別の従業員に対して行われる場合」がありますが、
紛争になりやすいのはもっぱら後者の退職勧奨です。

退職勧奨をすること自体は使用者の自由である一方、
これに対して労働者は当然ですが「断る」ことができます
これが重要な原則となります。

そのため、退職勧奨が実際に問題になるのは、
労働者が退職の意思はないと断っているのに執拗に退職勧奨が繰り返されるような場合です。

このような場合、退職勧奨が不法行為を構成したり、
実質的に解雇とみなされた上で退職が無効になるということがありえます。

退職勧奨とは

このような不当な退職勧奨(社会的相当性を逸脱した退職勧奨)のことを退職強要と呼ぶこともあります。

退職勧奨がしつこいと感じたら

社会的相当性を逸脱した退職勧奨は、退職強要とも呼ばれ、違法性を帯びるものとなります。

しかし、それが本当に違法性を帯びるものであるかどうか、
また、しつこい退職勧奨をされた場合にどのような対応をとるべきなのか、
対応に際して、どんなことに注意すればよいのかなど、
よくわからずに不安に思っている方も多いのではないでしょうか。

これらの点について、わかりやすく解説いたします。

退職勧奨と退職強要の境界(ライン)

退職勧奨をすることは、原則として使用者側の自由です。
そのため、退職勧奨が違法になるラインがどこにあるのかという点が問題になります。

この点については、
労働者が明確に退職勧奨を断る意思表示をした場合には使用者は退職勧奨行為を直ちに止めないといけないとまでは考えられておらず(最判昭55.7.10 下関商業高校事件、東京高判平24.10.31 日本アイ・ビー・エム事件(控訴審)等)

退職勧奨の方法が社会的相当性を逸脱する場合(労働者の自由な意思形成を困難にする場合)には違法性を帯びるものとされています。

具体的には、

  • 労働者の退職拒否の意思表示の有無
  • 退職勧奨の回数及び期間
  • 目的や選定方法の説明の十全性

などを基準として判断することになります。

弁護士

退職勧奨が違法性を帯びるのは
退職勧奨の方法が
社会的相当性を逸脱している場合です

しつこい退職勧奨への対応

退職意思がないのに会社からの退職勧奨がしつこいと感じた労働者としては、
次のような対応を取るべきです。


①退職の意思はないと明確に表示する(口頭だけなく、できるだけメール等の証拠で残す)

②退職勧奨の記録を取る(口頭での勧奨はできるだけ録音する)

③最初から会社の説明や説得に耳を貸さないのではなく、最低限の話は聞く(録音やメモに残す。)


これらの対応を取りながら、

a. どんな条件でも退職しないのか
b. 条件によっては退職しても良いのか
を考えるべきです。

通常は後者でしょうから、具体的には「どのような条件であれば退職しても良いのか」を考え、会社に対して

④無条件での退職はありえないが、退職に際して何らかのインセンティブがあるなら検討することを伝えるのも良いと思います。

それでも会社側が無条件あるいはその条件では退職しないと伝えている条件以上の条件を提示することなく退職勧奨行為を執拗に続けてくる場合には、退職強要として違法となり慰謝料等の損害賠償請求ができる可能性があります。

弁護士

しつこい退職勧奨に対しては
①明確に意思を伝える
②記録に残す
③最低限話は聞く
④検討できる条件を伝える
という対応が大切です

労働者側の注意点

退職勧奨について会社に勧奨行為をやめさせたり、退職の条件を交渉したり、損害賠償請求をしたりする場合に、最低限、労働者として注意しなければいけない点として、


ⅰ)退職勧奨の違法性を裏付ける証拠の有無

ⅱ)解雇が有効となりうる可能性の程度


の2つがあります。

ⅰ)についてはイメージしやすいのではないかと思います。
やはり、最後まで争いが解決できない場合には、裁判や労働審判など「証拠」が重要な手続に入るため、どのような事件であっても証拠集めが重要になり、退職勧奨の場合でも同様です。

ⅱ)については、実際には解雇が有効になる可能性がある中で、会社側として事を穏便に進めるために退職勧奨をしてくるケースがあるということです。

このような場合、退職勧奨と共に業務改善の指示・指導や命令が出されることも多いですが、そのような指示・指導や命令がなくても解雇が有効になる可能性が一定程度存在する場合もあります。

そのため、退職勧奨後に解雇されてしまい、その解雇の有効性を争えない(争っても勝てない)というリスクもあることをしっかりと認識しておくことが重要です。

弁護士

労働者としては
①証拠があるのか
②解雇が有効なこともある
ということに注意しましょう

退職勧奨時点で弁護士に相談すべきか

不当と思われる退職勧奨を受けている場合に、弁護士に相談したり依頼したりすべきなのか、相談や依頼ができるのかと悩まれる方もいるかもしれません。

実際、私たちにご相談くださる方の中には、
「他の法律事務所に問い合わせたが、解雇されたらまた相談してくださいと言われた」
という方もいらっしゃいます。

弁護士法人えそらとしては、退職勧奨された時点で弁護士に相談したり依頼することを検討される方が良いのではないかと思います。

理由としては、上記で述べたように、

①退職勧奨が違法かどうかのラインの見極め、
②その判断をするための証拠の価値(どの程度有効な裏付けか)の判断、
③解雇が有効となる可能性の判断

が一般の方にとってはいずれも困難であると考えられるからです。

弁護士への相談

「弁護士法人えそら」では
退職勧奨をされた時点での
ご相談をお勧めしています

退職勧奨を受けた方の希望は、退職勧奨をやめてくれればそれでいいという場合もあるでしょうが、
よほどのことがなければ「条件によっては退職を検討しても良い」ということが多いと思います。

しかし、上記①〜③の判断ができなければ、どの程度の強気な交渉が許されるかも分からない(交渉の目標着地点が分からない)状態で交渉に臨むことになってしまい、結果として良いものにならないということもあります。

また、弁護士が介入することで退職勧奨が企業側に対するプレッシャーとなり退職勧奨行為が止むこともあります。

そのため、弁護士の相談や依頼にかかる費用の費用対効果の問題もありますが、
弁護士法人えそらでは、それも含めて一度弁護士に相談されることをお勧めしています。

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退職勧奨の違法性が認められた裁判例

<下関商業高校事件(最判昭55.7.10)>

 労働者が退職勧奨に応じないことを表明しているにも関わらず、使用者が3〜4ヶ月の間に11〜13回の呼び出しにより20分〜2時間程度の退職勧奨を行い、退職勧奨は「退職するまで続ける」などと述べたり、配点をほのめかしたりしたなどの行為は、「退職勧奨として許容される限界を超えている」とされ、不法行為を構成するとされた。

<エム・シー・アンド・ピー事件(京都地判平26.2.27)>

うつ病に罹患していた労働者に対して、退職勧奨に応じなければ解雇する旨を述べ、労働者が退職意思はないことを表明した後も繰り返し勧奨行為が行われ、その中には1〜2時間の長時間にわたるものもあることなどから、これらの行為は労働者の「自己決定権を侵害する違法なもの」とされた。

<新和産業事件(大阪高判平25.4.25)>

 退職勧奨を拒否した労働者が、2ヶ月にわたり退職勧奨を続けられた後に配転により賃金が半額以上に切り下げられ、しかも配転された部署では仕事もなくいわゆる窓際(追い出し部屋)であったという事案において、当該配転が業務上の必要性も認められず退職勧奨を拒否した労働者を辞めさせるためのものであり無効とされた上、不法行為となるとされた。

<日本航空事件(東京高判平24.11.29)>

 会社からの退職勧奨に対して、労働者が自主退職しない旨を書面で提出した後、数日中に3回の長時間にわたる面談で「いつまでしがみつくつもりなのかなって」、「懲戒免職になった方がいいんですか」などの強く直接的な表現による退職勧奨が行われた点が不法行為を形成するとされた。

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そんなときは、労働問題・不当解雇専門の弁護士にご相談ください。

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