雇止めとは

雇止め(やといどめ)とは、
「期間の定めのある労働契約によって雇用されている従業員」について、
その期間の終了時に契約の更新をしないことをいいます。

期間の終了による契約の終了という点が使用者の意思により契約の終了である解雇と大きく異なる点です。

更新拒絶という場合もあります。

雇止めとは

雇止めの問題点

期間の定めがあるわけですから、原則としてその期間の終了と同時に雇用契約が終了するわけですが、
形式的に有期労働契約の形をとっていても実質的には期限の定めのない労働契約と同様に長期の契約継続を前提としている場合もありますし、
何度か更新が繰り返されている場合など労働者が次回も更新されるという期待を抱いても仕方ない場合もあります。

そのような場合でも「期間終了だから」という理由だけで使用者が更新を拒絶できるのかというのが雇止めの問題です。

雇止めの手続的義務

雇止め予告義務

有期労働契約が3回以上更新された場合または1年を超えて継続勤務している場合、
使用者が雇止めをしようとするときは、
少なくとも期間満了日の30日前までに予告しなければいけません。労働基準法14条2項、平15.10.22厚生労働省告示357号1条)

雇止め理由明示義務

使用者が雇止めをした場合又はしようとする場合には
更新しなかった理由」又は「更新しないこととする理由」について、
労働者が証明書の請求をしたときは
使用者は遅滞なくこれを交付しなければいけません
(同告示3条1項、2項)

上記の予告義務や理由明示義務は、
あくまで告示によるものであり使用者の法的義務とまではいえない点は注意してください。
従って上記の義務に違反していたから直ちに雇止めが無効になるとか損害賠償請求の対象になるということはありません。

雇止めの実質的制限(労働契約法19条)

上記のような雇止めに関する問題意識について、労働契約法19条は、
無期契約の解雇と同視できる場合または
契約更新の期待に合理的理由がある場合で、
労働者が期間満了の日までに契約更新の申し込みをするか、期間満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申し込みをした場合には、
その申し込みを使用者が拒絶することについて客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当と認められない場合には、
使用者は従前と同一の条件で労働者の申し込みを承諾したものとみなすこととしました。

(有期労働契約の更新等)
第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

労働契約法19条の文言では、労働者からの「契約の更新の申込み」、「契約の締結の申込み」が必要になっていますが、これは使用者からの雇止めの意思表示に対して何らかの反対の意思表示が使用者に伝われば良いと考えられており、厳格な要件ではありません。

この点について、就業規則で更新の申込みや締結の申込みを一定の様式の書面で行わなければならないと定められていたり、契約期間終了後10日以内にしなければならないと定められていたとしても、その効力は認められないと考えられています(「2018年労働事件ハンドブック」第二東京弁護士会労働問題検討委員会400頁)。

労働契約法19条は、過去の判例法理の流れを汲むものであり、
その内容は実質的に変更されていないとされています。

雇止めの問題に関しては、
まず、実質的に期間の定めのない契約と同視できる有期労働契約は、期間の定めのない労働契約と同様に解雇権濫用法理を類推適用すべきという判例法理(最判昭49.7.22 東芝柳町工場事件)が確立されました。

その後、判例法理はさらに1歩進み、
仮に期間の定めのない労働契約と同視できない場合であっても、雇用継続に対する合理的期待がある場合には、やはり解雇権濫用法理を類推適用すべきとしました(最判昭61.12.4 日立メディコ事件)。

これらの判例法理によって、

  • 実質的に期間の定めのない契約と同視できる有期労働契約の場合や
  • 労働者において期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性がある場合には

雇止め(更新拒絶)が
客観的に合理的理由があり社会的に相当でなければ権利濫用として無効となるものとして扱われており(最判平21.12.18 パナソニックプラズマディスプレイ(パスコ)事件)、
この判例法理を成文法として規定したのが労働契約法19条です。

弁護士

労働契約法19条は、
雇止めが無効となる条件を
これまでの判例に基づいて
規定しています。

具体的な判断基準

有期労働契約の期間満了時に労働者が更新を希望するにも関わらず、使用者が契約の更新を拒絶することが無期契約の解雇と同視できるか又は労働者に契約更新の合理的期待があるといえるかについての判断基準は、

①雇用の臨時性・常用性
②更新の回数
③雇用の通算期間
④契約期間管理の状況(契約書を毎回締結しているか、形骸化していないか)
⑤雇用継続の期待を持たせる使用者の言動の有無

などを総合考慮して、個々の案件ごとに判断することになります。

雇止めの有効性が争われた実際の裁判例は、肯定例も否定例も多くあります。

無期契約の解雇の場合に比べると、まず無期契約の解雇と同視できる又は更新することに合理的期待があるといえるかという壁があることは確かですが、期間の定めのある契約の終了だから一切争えないということはありません。

契約を終了されたことに疑問を持たれている方は、ぜひ一度、弁護士法人えそらにご相談ください。

弁護士

契約満了での更新拒絶は
争える可能性がありますので
ぜひ「弁護士法人えそら」に
ご相談ください。

有期契約の無期契約への転換

有期の労働契約が一定期間を超えて反復継続された場合、有期契約労働者の申込みにより、その有期契約を無期労働契約に転換させることができます(労働契約法18条)。

(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
第十八条 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約…期間を通算した期間…が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。(以下略)

無期労働契約への転換は、労働者にとっては期間以外の条件が変わらないとしても地位の安定の面で強烈な効果を生みますので、これは労働者にとっても逆に使用者にとっては労働者の一方的意思表示によって無期労働契約の締結を強制されるわけですから、強烈な条文であるといえます。

この条文自体は非常に長い文言が使われていますが、簡単にいえば、

① 同一の使用者との通算契約期間が5年を超えること

労働者が、有期契約期間中に、期間満了の翌日から労務提供される無期労働契約の締結の申込みをすること

の2つが要件となっていることから、契約期間が途切れずに同じ会社と有期契約を結びながら5年を超えて仕事している有期労働者は、ほぼ確実に無期の労働者となることができます(特別法で除外されている労働者もいます。)。

労働者からの申込みは、口頭での申込でも可能ですが、証拠を残す意味では書面やメール等によって行うべきでしょう。

一方で、契約と契約の間に6ヶ月以上の空白期間がある場合には、契約期間が通算されません(労働基準法18条2項)。
これを「クーリング」と呼びます。
クーリングされる空白期間は原則6ヶ月と考えておけば良いですが、空白期間の直前の有期労働契約が1年未満の場合には、その期間の2分の1以上の空白期間があればクーリングされるので注意が必要です(同法18条2項第2括弧書)。

弁護士

①通算契約期間が5年超
②労働者が無期契約の申込み
…これで無期契約に転換できます。

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